浮気が与えてしまった子供の心のケア
パートナーの浮気が発覚した時に子どもがいたらどうでしょうか。子どもには絶対に知られたくありません。浮気の事実に自分も傷つきますが、子どもに知られてしまえば、大人よりも遥かに大きく子どもは傷ついてしまいます。
特に幼い子どもにとって家族や親という存在は、家庭という揺籃の中、崩れることなど考えもしなかったアイデンティティの根拠といえるものです。
それにもかかわらず、すべての信用を預けていたはずの親が、隠れて浮気という汚い裏切り行為をしていたことや、それによって暗がりの生まれた家庭が次第に崩壊へ向かう気配をつぶさに感じることで、考えもしなかった精神的苦痛を受けることになるのです。
浮気相手が自宅に乗り込んできて、口角に泡を飛ばすような事態になることもあります。
さらに、離婚を選択すれば、両親の愛情の半分を失う事にもなります。
そうして、幸せに過ごしていたはずの毎日を一変させた浮気は、子どもの、今後の生育や生活に甚大な影響を与えてしまうことになるのです。
今回は浮気によって子供が受ける心の傷はどのようなものなのか、どうやって対処すればいいのかを紹介していきます。
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成長期の子ども特有の精神的外傷
子どもの成長期と記憶力
子どもは成長期の12才ごろまでにかけて脳が飛躍的に成長していきます。読者の皆さまにもご理解いただけると思いますが、子どもは記憶力がとても良く、幼い頃の記憶は脳の深い部分に生涯大切にしまわれています。
幼少期の宝物のような思い出は、物語ることなどしなくとも鮮明に思い描くことができるでしょう。
浮気が子どもをPTSDにする
しかし、幼い頃に虐待を受けるなど、自分や親などの存在を消し去ることを望んで成長してきた子どもはそうではありません。たとえば、PTSDと呼ばれる障碍は、強いストレスを感じた際、その記憶領域をまっしろに塗り替えます。
思い出そうとすると頭がまっしろになる、という事です。
PTSDとは、「心的外傷後ストレス障害」といわれ、以下のように定義されます。
「命の安全が脅かされるような出来事、戦争、天災、事故、犯罪、虐待などによって、強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害である」
PTSDが記憶領域を隠すのはなぜか
PTSDが記憶の喪失につながる理由は、人間は忘却によって自己を保つと言われますが、その忘れたいと望む強い気持ちが生活の大半を占めたときに、精神の崩壊という危機的状況に陥る可能性があります。PTSDは、これを免れるために、私たちに皆に備わっている防御機能であると解釈されています。
その結果、幼いころの記憶は断片化されるか、或いは破壊されてしまいます。
アイデンティティとは
記憶が失われた結果、アイデンティティ、つまり自分の礎を失う事になります。
アイデンティティとは、「自己同一性」や「特定集団への帰属意識」などと訳されますが、学術的には以下のように定義されます。
「人が時や場面を越えて、一個の人格として存在し、自己を自己として確信する自我の統一を持っていること(本質的自己規定)」
原体験とは
おそらく多くの人は、宝物のような幼少の記憶の中に、そうしたアイデンティティの源泉を見つけることができるでしょう。しかしながら、PTSDによってその宝物は消されてしまうのです。
消された記憶の一部は原体験と呼ばれ、自己の価値観を知ることで将来の指針となるとともに、また創造性の源泉ともなる大切な記憶なのです。
記憶の欠落
過去に虐待を受けたりした子どもは、成人にになっても、事実、親の支配力や影響力の強いと考えられる15歳くらいまでの記憶が全く無いという方もいます。もちろん、記憶の欠落が、幼少期の一部分である場合もありますが、しかしだからと言って、子どもの未来を想う私たちから見て、それは許されることではありません。
こうした影響を踏まえ、これを測りながら以下読み進めてください。
浮気によって受ける子供の心の傷とは
先にも書いたとおり、家族や親はアイデンティティの根拠になります。その親が、浮気という裏切り行為をしていれば、子供にとっては、大切な家族が崩壊してしまうという恐れが生じます。
親同士、子どもの面前で罵り合う事も少なくないでしょう。
前者は「裏切者の子どもである」という悲しみや憎しみとして、後者は「自分の居場所が無くなってしまうのではないか」という恐れや不安の気持ちとして、親への憎しみと、それゆえの孤独を感じることになります。
「他の友人やその家族には、暖色の明かりが外に零れるほどの団欒があり、楽しく幸せそうなのに、なぜ自分の家族はそうでないのだろう」
アイデンティティの喪失とは
アイデンティティの根拠を失うということは、平易な言い方をすれば、自分という人間がどんな人間であるかを見失うということになります。これはアイデンティティクライシスと言い、大人であっても精神状態に多大な影響を及ぼすことになります。
- 自己認識の危機。子供から大人になる青春期に経験する。(その程度に大きな個人差あります)
- 民族や国民などの集団が、国の併合や宗教上の抑圧、またジェノサイドなどにより、自己認識の混迷に陥ること。(近年では移民問題が取り上げられています)
特に子供のうちは、社会と接触する機会が無いため、家族が世界の全てといってもよく、絶対的な影響を持っています。このためなおさら人格形成に影響をおよぼすことになります。
父か母か、どちらかを失う
浮気が発覚すれば、離婚を選択する場合もあると思います。しかし、別れることが決まれば、子供は、母親か父親かどちらか一方に付いていく選択を迫られることとなります。もちろん、面会交流権が保証されているため、離婚後も面会という形で会って話をすることができるのですが、生活をしてゆくには様々のことが起こります。万が一、引っ越してしまったりすれば、それこそ生き別れの形になる可能性もあります。
たとえメールやスマートフォンで連絡を取っていいという取り決めがあったとしても、やはり一番いいのは、誰一人欠けることなくみんなで平和に過ごすことです。
父の愛と母の愛
仮に引き取った親が努力すれば傷は無くなるのかというと、決してそうではないのです。片親の母親が、家族の包み込むような暖かさを演出するとともに、厳しさやまた道理を教える父の役割を果たすこともあります。大変な苦労がそこにはあるでしょう。
しかしながら、それでも埋めきれない喪失感というものはあるのです。子どもには、両親からの愛情が必要なのです。
ジェンダーの問題は別にして、父親には父親的な、母親には母親的な、それぞれ固定化した役割があるのです。こればかりはどうやっても補うことができません。
心の傷を放っておくとどうなるのか
信頼していた親の裏切りによって受ける子供の心の傷は、想像以上に深いものです。
親の気持ちは子どもに伝わる
親が浮気をされて傷ついている心は、子どもにも当然伝わります。大好きな親が傷ついているその原因が、また他方の親なのです。子どもはその両義性に苦しむことになります。また、浮気をするようになると家庭から心が離れ、子どもに無情に当たる場合もあるでしょう。さらにまた、子どもの目の前で諍いをしてしまう場合もあるでしょう。
子どもは、どちらかに正しさを求めているのではなく、冗談の飛び交う明るく平穏で幸せな家庭を求めているだけなのです。
浮気された事の腹いせに、子どもに向かって愚痴を零したりしては絶対にいけません。それは心を固くするだけです。
精神的な影響AC/PTSD/CD
放っておけば、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神疾患や、また精神疾患に至らずとも大人になったときにAC(アダルト・チルドレン)と呼ばれる状態になることがあります。ACとは、子供の頃に親から十分な愛情を受け取ることができなかったことが原因で、対人関係にトラブルを抱えている状態のことをいいます。
端的に言ってしまえば、他人からの愛情を素直に受け取ることができないがために、心の底から他人を信用することができない、ということになります。また将来、ACを抱えたまま結婚すれば浮気の原因ともなり、それが連鎖していく可能性さえあります。
夫婦関係を再構築した場合
夫婦関係を回復する選択を取った後、果たして今まで通りの愛情ある家庭を築くことができるでしょうか。子どもは、裏切りの苦みを知ってしまいました。今挙げたような精神疾患やACの状態になること以外にも、浮気した親に対して心を開かなくなり、そうした子どもに愛情を注ぐことを止めてしまう。そうして、家族の仲が取り返しのつかない状態になってしまうこともあります。
もう一つの社会である学校生活
学校生活にも影響が出始めることがあります。家庭が不幸であるのに、学校で気丈に振る舞えなどしません。また、噂は広まりやすいものです。悪意のない噂ほど質の悪いものはありません。
近年はスマートフォンが普及したことにより、SNSなど誰もが閲覧できるスペースに「○○ちゃんの元気が無い理由がどうやら親の浮気らしい」「かわいそう」「いい気味」など、心無い、ただの薄い興味で話題が立つことがあります。
そうして、心の未熟な子ども達の悪意のないやり取りによって、子どもは被害者にもなりうるのです。
いじめの構造にも似て、噂には悪意が結びつきやすいものです。そうして対人関係にトラブルを抱えることも珍しくはありません。ひどいと不登校に陥ることもあります。
子供の心の傷を癒すためにできること
親が子どもにやるべきこと
子供に寄り添う
浮気が発覚したとき、すぐにできることとしては子どもに寄り添うことです。子供は悲しみや不安を抱えていますから、少しでも気にしないようによく話しかけてあげてください。また、子供の発達段階に合わせた上で事実を隠さずに伝えてください。隠し事をされるとより不安を覚えます。
子どもの前で争わない
子供の精神状態にもよりますが、なるべく子供のいるところで争わないことをおすすめします。子供の心まで荒んでしまいます。カウンセリングを受けさせる
また、元気そうに見えても一度心理カウンセラーに相談したほうがよいでしょう。親だから言えないこともあるのです。当然浮気されたあなたもカウンセリングを受け、問題を洗い出し、現在の精神状態を的確に把握しておく必要があります。学校への対応
学校の先生にも状況を伝え、上手く対応してもらえるように配慮しましょう。うつ病やPTSDなどの兆候が現れたらすぐに心療内科で診てもらう必要があります。学校なども休ませるなど、安静にすることが求められます。再婚について
離婚して片親状態になった場合ですが、ご自身のトラウマなどすべて解決できた上で再婚を検討してみてはどうでしょうか。先にも述べたようにやはり、父親には父親にしかできないことがあり、母親には母親にしかできないことがあります。
再婚する予定があるのなら、子供との相性を第一に考えてあげてください。
浮気が発覚したときの子供のケアのまとめ
パートナーの浮気が発覚したとき、子供はアイデンティティの根拠を失うことになりますから、想像以上に傷ついているものです。放置すれば子供に不幸が降り掛かってしまいますので、周りの助けを借りながら子供の心が死んでしまわないように行動してください。
浮気が発覚し、つらい時期ではありますが、子供までダメージを追ってしまえばさらに悲しいことになるのです。
子どもの将来を誰よりも傍で見守り続けることができるのは、親を除いて他にはいません。
子どもを傷つけずに関係を整理する
子どもに自分と同じ幸せでない思いを感じさせても良いのでしょうか。子どもの心とはとても繊細です。特に思春期を迎えるまでは、身を守るため、恐怖をより強く感じるようにできています。子どもの頃だけに見えた暗がりのお化けは、そうした事の表れです。暗闇に恐怖を感じるようにできているのです。
浮気によって起こりうる子どもの繊細な心への影響は、想像を超える恐怖を子どもに与えます。冒頭の“自分と同じ”とはただの比喩にすぎませんが、実際には大人になった今では感じようのない恐れを抱くことになるでしょう。
浮気や離婚は、それが起こらないことが何よりです。しかし、浮気に限らずとも、家庭という要素が統べる小さな世界に落とされたいかなる衝撃に対しても、子どものついては必ずそのケアをする事をお願いいたします。
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